八王子城跡の魅力を高めるデザインプロジェクト

  • 団体名 CDS(Community Design Supporters)
  • 代表者 工学部 デザイン学科 4年 石井 里緒菜
  • 参加メンバー人数 11名

実施スケジュール

2021年2月以降~11月中旬
2月以降 定期ミーティング(毎週水曜15時~、工学部棟3-35実験室)、緊急事態宣言中は遠隔でのミーティングを実施
6月中旬 市文化財課および三ッ鱗会への進捗報告(遠隔ミーティング)
10月中旬 コロナウイルスの影響により、紅陵祭の成果発表は成果を記録した動画を公開
11月中旬 YouTubeコンテンツの公開
ARうじてるくん体験の様子
ARうじてるくん体験の様子
動画イメージ図
動画イメージ図
三ツ鱗会との対面ミーティングの様子
三ツ鱗会との対面ミーティングの様子

実施内容・成果

 私たちCDSは、前年度に取り組んだ市文化財課との協働プロジェクトを踏まえ、八王子市教育委員会生涯学習スポーツ部文化財課、およびNPO法人八王子城跡三ッ鱗会と公民学の三者連携プロジェクトに取り組んだ。プロジェクトを構成する具体的な提案は、(1)御城印、(2)子ども向け甲冑キット、(3)若年層向け動画コンテンツ、(4)ARアプリである。11名のメンバーはまず、全員で(1)を、その後、3つのグループに分かれて(2)~(4)のデザインに取り組んだ。
(1)御城印について
 御城印のデザインをするにあたり、まず、その手本になった御朱印と、他の御城印について調査分析した。その結果、御朱印は神社や寺院の名称が筆書きされ、社印が押されているシンプルのものが多かった。一方、御城印は御朱印とは異なり、自由度が高く、御朱印を模したシンプルなものから、イラストが描かれたものまで多岐に渡っていた。デザインの案出にあたっては、三ッ鱗会の案内で八王子城跡を歩いた上で、1人1案を提案した。関係者とのミーティングをへて、2種類が準公式の御城印としいて認定されることとなった。
一つは子ども向けで、八王子城跡のマスコットキャラクターである「うじてるくん」をモチーフとした、キャッチーかつインパクトのあるものである。もう一つは一般向けで、城主・北条氏照の印章に使われていたという「龍」をモチーフにした戦国時代の「甲冑師鍔」と、北条氏照が八王子城を築城したときに植えた「サイカチの枝」、小田原北条の家紋である三鱗(みつうろこ)、「八王子城」筆文字を組み合わせたものである。黒の筆文字の他、ユニバーサルデザインに配慮した朱色を用いている。これらの御城印デザイン案は、連携先から高い評価を得て、三ッ鱗会ではポストカード化が検討されている。

一般向け御城印
一般向け御城印
子ども向け御城印
子ども向け御城印

(2)子ども向け甲冑キットについて
 印刷した合成紙を貼り付けたボールチップ紙をレーザーカットしたパーツで構成されるキットで、パーツ上の穴に平紐をとおして組み上げることで甲冑となる。将来の八王子城跡の保全や歴史的活動への参加を促す一助として、城跡を訪れる子どもたちを楽しませることを目的としている。来年度以降、三ッ鱗会が開催する「子ども甲冑教室」での使用する甲冑キットのプロトタイプになる。試作を重ね、完成に近づいている。

甲冑制作をしている様子
甲冑制作をしている様子

(3)若年層向け動画コンテンツについて
 八王子城跡に対する若者の興味関心を高めるためのYouTube動画である。第1話「北条氏照」、第2話「甲冑」、第3話「甲冑体験」の3話構成で、案内役をオリジナルのライブ2Dキャラクターと、そのキャラクターに扮したCDSメンバーが務める。単に歴史を解説するのではなく、キャラクターによるストーリー仕立てにすることで、楽しみながら歴史について学ぶことができる。現在、キャラクターのデータとシナリオが完成し、声優および配役も決定、城跡での写真撮影を終え、公開された。

動画に使用する写真の撮影風景
動画に使用する写真の撮影風景

(4)ARアプリについて
 新型コロナ禍においても三密を避けて楽しめるコンテンツとして、顔認証およびマーカ認証によるARアプリ3つを開発した。顔認証によるARアプリは、タブレットPCのカメラに写った人の顔が、公式マスコットキャラクター「うじてるくん」の顔イラストに差し替わるものである。マーカ認証によるARアプリは、カメラが捉えた特定マーカによって、3Dデータ化した「うじてるくん」などが表示されるものである。これらのアプリは市文化財課から高い評価を得て、11月中旬に「桑都日本遺産センター八王子博物館」で公開された。

活動を終えて

 私たちCDSは、前年度の先輩方の活動を引き継ぎ、市文化財課および八王子城跡三ッ鱗会との公民学連携プロジェクトに取り組んできた。下記で述べるとおり、進行については当初の計画に照らして満足できる状態とは言えないが、三ッ鱗会の方々とは楽しく交流させて頂き、文化財課の方々にはデザイン案の利活用に期待を寄せて頂き、課題や卒業研究の合間にコツコツ取り組んだ甲斐があった。上記の三者連携は次年度も継続の予定のため、現3年生を中心に準備を進めていきたい。
また、コロナウイルスの影響によりイベントの中止や延期、活動作業の遅れから当初予定していた活動が出来なかった。
改善点
 今年度は新型コロナ禍の活動を想定していたとはいえ、残念ながら、主たる活動期間となるはずの夏季休暇期間が非常事態宣言下となった。特に学内でのデザイン作業が遅延した他、成果発表の場と位置付けていた秋口の地域イベントも延期または中止となり、企画書の計画どおりには進行できなかった。学生チャレンジ企画の正規の活動期間中に完成したデザイン提案は計画の半分ほどであり、残りは引き続き制作を続けている。また、活動期間中、遠隔会議ツールを用いて上記の連携先とミーティングを重ね、期待と励ましの言葉を頂いたことは、取り組みのモチベーションを保つために役立った。その一方、遠隔ツールがあるという安心感からか、メンバー間のコミュニケーションが少々おろそかになり、後々、情報の認識にズレが生じてしまうことがあった。以上の2点が反省点であり、今後の活動で改善すべき点であると考えている。
今後の課題
 上記のとおり、活動期間中の成果発表の場を失った私たちだが、連携先の文化財課の協力を得て、11月中旬に「桑都日本遺産センター八王子博物館」で開発したARアプリを公開し、来館者に楽しんで頂く予定である。また、3月に延期となった地域イベント「元八マルシェ」においても、三ッ鱗会が印刷配布予定の御城印ポストカードを含め、地域の方々に楽しんで頂く予定である。以上の活動が今年度に残された課題であり、責任をもって取り組んでいきたいと考えている。
最後に
 今回の活動については、正規の期間内に想定したゴールに辿り着けたとは言えないが、連携先の前面的な協力を得て、今後につながるデザイン提案を具現化できたと考えている。また、メンバー個々の経験がそれぞれの授業課題や卒業研究にもフィードバックされ、総合的なデザインの学びにもつながった。連携先の関係者とのコミュニケーションもかけがえのない経験である。最後に、市文化財課および三ッ鱗会の皆さまに御礼申し上げます。

会計報告

  • 活動資金 160,000円
  • 支出総額 47,067円
内 訳残金 112,933円
項 目 小 計
消耗品費 甲冑キット制作用ボール紙(チップボール26号・厚1.92mm・A2) 50枚×1 15,853円
消耗品費 甲冑キット制作用平紐(7mm・2m)×1 177円
消耗品費 甲冑キット制作用平紐(7mm・3m)×1 209円
用品費 ARアプリ展示用三脚 6,600円×3 19,800円
用品費 ARアプリ展示用タブレットホルダー 2390円×3 7,170円
用品費 動画配信用ウィッグ(ライトブラウン) 2,259円
用品費 動画配信用プリーツスカート(グレー) 1,599円
合 計 47,067円

報告書、レポート一覧

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