地域と学生が協働する六次産業化プロジェクト

  • 団体名 関ゼミナール 大津島チーム
  • 代表者 政経学部 経済学科 2年 花里 涼
  • 参加メンバー人数 20名

実施スケジュール

2019年6月1日~11月24日
6月1日~7月5日 山口県離島青年会議 プレゼンテーション準備
7月6日 山口県離島青年会議参加 プレゼンテーション発表
7月7日 大津島視察案内補助
7月8日 圃場整備
9月1日~30日 島内実施作業計画/準備検討
9月27日~30日 圃場整備、商品開発
10月14日 ヤッチャバ市場の打ち合わせ
10月15日 紅陵祭の準備
10月18日~20日 紅陵祭
11月9日 ヤッチャバ市場 出店
11月22~24日 アイランダー2019参加

実施内容・成果

 私たち関ゼミナールは、2017年の大津島ゼミ合宿をきっかけに、山口県周南市にある離島の大津島と交流するようになりました。大津島の超高齢化等の現状を目の当たりにし、何か島の特産品を開発することにより、若者を島に呼び込み、島の振興が可能になるのではないかと考えました。
【すだいだいの植栽と畑の拡大】
 島には「すだいだい」という関東ではほとんど知られていない柑橘類の果樹があります。みかんの木だと、イノシシに食べられてしまいますが、すだいだいは酢っぱすぎてイノシシも食べません。人手不足と獣害に苦しむ島にとって理想的な作物であると考えました。
 私たちは3月に大津島内で耕作放棄地を借り受け、そこを開墾し苗木を60本植えていました。耕作放棄地を活用して徐々にすだいだいの数を増やして、すだいだい製品を開発し、それを関東でも売り出そうというのが長期目標になっています。苗畑では、現在まで定期的に圃場整備や草刈りをしており、苗木はすくすくと成長しています。来年の2月には、いよいよ苗畑から一般の畑に移植する作業に入ります。これに成功すれば、さらに苗畑に次の苗木を植栽し、順次、すだいだい畑を拡張していく計画です。
 六次産業化とは、ひとつの地域で生産・加工・販売まで一貫して行うことです。私たちは、耕作放棄地を活用してすだいだいを生産し(一次産業)、それを商品に加工し(二次産業)、さらに知られざる柑橘類ということでその商品を首都圏で販売していこう(三次産業)と考えました。
【商品開発とボランティア】
 8月4~6日の夏合宿で商品開発のワークショップを実施し、具体的に商品化可能な製品をリストアップしました。全部で15個の商品化のアイデアが出た中で、実現可能性の高いものをリストアップしました。におい袋、飴、石鹸、入浴剤、ドレッシング、カステラ、芳香剤です。
 また夏合宿では、島の耕作放棄地を開墾したすだいだいの苗畑の草刈りをし、また島の海岸清掃や集落と集落をつなぐ道路脇の側溝に溜まった土砂を除去する作業などを実施しました。そうしたボランティア活動を通して、島民の皆様との信頼関係を大きく高めることができたのではないかと思っています。
 9月27~30日には、選抜メンバーで島を再訪しました。まず28日の午前中には島の特産品の「かぼす」の収穫をしました。午後は、前回の合宿でリストアップしてあった7品目の商品試作をしました。また紅陵祭の模擬店で、かぼす醤油で味付けしたタコのから揚げを出すことになっていたため、収穫したかぼすを使ってタコのから揚げの試作をしました。29日は引き続きかぼすを収穫し、選別をするなどの作業をしました。
 台風19号が襲来する前日の10月11日には、紅陵祭で展示するために飴、カステラ、入浴剤、ドレッシング、におい袋などを東京において再度製作しました。また授業の空き時間に皆で集まって、紅陵祭での展示パネルを製作いたしました。

新商品考案会議の様子
新商品考案会議の様子
カステラづくり
カステラづくり

【成果】
一次産業
 すだいだいはまだ島内でも広く栽培されているわけではない中で、耕作放棄地を開墾し、苗畑を造成したことによって、今後、果樹園を拡大していくための準備ができました。一年目はすだいだいの木が雑草に覆われてしまうほどになる中で、定期的に除草するなど、しっかりと管理したことによって、1本の苗木が枯死した他は、59本がすべて順調に育っています。
 今後商品開発に成功すれば、自ずとすだいだいの需要も高まっていくので、一次産業として引き続き畑を拡大していきたいと思います。

すだいだい畑の草取り
すだいだい畑の草取り
かぼすを収穫している様子
かぼすを収穫している様子
島内交流会の様子
島内交流会の様子

二次産業
 今年度は、カステラ、ドレッシング、飴、におい袋、入浴剤の五点を試作し、紅陵祭で展示しました。「すだいだい」で味付けしたカステラは、適度に酸味の効いて甘酸っぱく仕上がり、十分に商品として提供できそうだという感触を得ました。ドレッシングも新鮮野菜と非常にうまくマッチングします。来年度には大津島の一般社団法人「磊の島」と提携し、カステラやドレッシングなどを商品化する予定です。また今年度中に島内デザイナーの松田さん(studio hutte)とパッケージデザインも決めます。
 また、紅陵祭で大津島産のかぼす醤油で味付けしたタコのから揚げを販売しましたが、私たちが収穫してきたかぼすを絞ったかぼす醤油が絶妙にタコのから揚げとマッチングし、驚くほどの人気を博しました。二日目は、朝からお客が殺到し、三時間で完売してしまうという嬉しい悲鳴が上がりました。このことからかぼす醤油、すだいだい醤油は、十分に商品として提供できるという感触を得ました。紅陵祭では大津島産かぼすを大々的にアピールし、大津島の知名度も上げることができたのではないかと思います。
三次産業
 11月に開催された国交省主催の、全国の島々が集まる祭典「アイランダー」に参加し、既存品であるすだいだいビールの販売や島民の編んだかごなどの販売を手伝いました。来年度には毎週墨田区で開かれている青果市場「ヤッチャバ」にて、すだいだいビールに加え自分たちの考案した新商品を販売する予定です。そのため、すだいだいの成分調査を実施して、その特性を明らかにし、商品のアピール点を探っていきたいと考えています。島のかぼすやすだいだいそのものの魅力を十分に引き出す商品を開発し、すだいだいの魅力とセットで大津島の知名度の向上を図っていきたいと考えています。

活動を終えて

活動を終えて
 私たちの活動は長期的な視野のもとに行われていて、今年度ははじめの一歩です。学生チャレンジの資金の有無にかかわらず今後も活動を続けていきたいと考えています。すだいだい畑とそれを利用した商品が根付くまで、ゼミで代々事業を継承し、育てていきたいと考えています。
 このプロジェクトの最終目標は大津島の活性化です。人口減少・過疎化・超高齢化に悩む島の中で、島が生き残るためには若い人々の島への移住が不可欠です。すだいだいのような島の特産品を売り出して、六次産業化に成功すれば、自ずと島内に雇用の場が生まれ、若年層の移住も行われるのではないかと思われます。
島との信頼関係の構築
 学生チャレンジは、「六次産業化」をキーワードに島の活性化を図るというものでした。確かにその活動がメインでしたが、高齢化に悩む島の人々は、普段やりたくてもマンパワー不足でなかなかできない海岸清掃や、島の側溝の土砂の除去など、多くの活動を私たちに期待されていました。
 そうしたボランティア経験も私たちにとって貴重な体験になりました。海岸清掃では、漂着するプラスチック・ゴミのあまりの多さに驚き、普段ゼミの場で学習しているグローバルな環境問題である海洋プラスチック・ゴミ対策が、いかに急務な課題かということを、ローカルな現場での取り組みを通して実感しました。
 副次的なボランティア活動を通して、プラスチックによる海洋汚染や、イノシシの獣害の深刻さなど、多くの問題を学びました。それを通して、商品開発ということのみでは得られない、島の人々との信頼関係を深めることができました。島でバーベキューをした折など、島民の皆様が多くの海産物を差し入れとして持ってきてくださり、私たちのボランティア活動に感謝の言葉を述べてくださいました。商品開発という表面的な活動成果よりも、もっと大切ではないかと思われる島民の皆様との信頼関係が深まったことが今回の学生チャレンジの最大の成果かも知れません。
 信頼関係がなければ、今後の商品開発もうまくはいかないでしょう。すべての活動の基礎となるのは、お互いに信頼し合うことだと実感しました。
商品化の課題
「すだいだいカステラ」や「すだいだいドレッシング」は完成度も高く、まずは地元のレストランなどで提供するところからはじめてみます。試作した商品の中で、まだ課題を残しているものもあります。飴は、溶けやすいなどの難点がまだ残っています。味については十分に仕上がっていると思います。地元企業と協力していけば商品化可能と思います。
 におい袋は、すだいだいの果実が樹木から落ちず、次の年まで継続して実をつけていることから「落ちない果実」ということで、受験生の「御守り」として使えるのではないかというアイデアで開発しました。匂いを嗅ぐと頭もスッキリする効果があると考えています。ただ、今のところ匂いが早く消えてしまいます。匂いが長期間持続するように、工夫する必要がまだ残っています。
 入浴剤は、ゆず風呂より強い酸っぱい香りが湯船に広がります。これも人気が出る商品になる可能性があります。しかし、まだ私たちの試作品では、皮の処理がうまくいかないため、完全に湯船で溶けるように改善する必要があります。
 今回は商品開発のための十分な時間が取れなかったこともあり、以上の商品は未完成の段階にとどまっています。カステラなどはさらに完成度を高め、未完成のものはさらに時間をとって研究を進めてまいります。最終的に飴や入浴剤を商品化するためには、企業との連携が不可欠になります。私たちのアイデアを地元企業に伝え、地元の特産品として商品化にまで漕ぎつけていきたいと考えています。
最後に
 この間の活動は少しずつ注目を集めるようになってきました。11月2日に東京交通会館で山口県主催のイベント「YY!ターンカレッジ公開講座」が開催されました。その折に山口県の職員の方から私たちのゼミに対し、「この間の活動を紹介してほしい」と講演依頼がありました。県が学生に講演依頼をするということに驚きましたが、ありがたく引き受け、代表の花里が講演に行くことになりました。
 11月23~24日には国交省主催の離島振興イベント「アイランダー」に参加しました。これも大津島の方々から信頼されて、企画に参加できることになったので、大変に名誉なことです。この機会でも大津島とすだいだいの魅力をしっかりアピールしていきたいと考えています。

会計報告

  • 活動資金 300,000円
  • 支出総額 300,498円
内 訳
項 目 小 計
交通費 新幹線往復(東京~徳山間)×6名分 190,480円
大津島巡行船往復(徳山~馬島間)×6名分 7,100円
ふれあいセンター宿泊費×6名分+施設使用料 34,020円
かぼす輸送費(大津島巡行~拓殖大学) 10,922円
消耗品費 新商品試作材料費 14,976円
島内デザイナー・松田翔剛さん
パッケージデザイン相談費
5,000円
島民・松本千恵子さん 講師料 10,000円
島食堂ひなた 施設使用料 10,000円
安達寿富さん 謝礼金 かぼす収穫体験 18,000円
合 計 300,498円
  • 活動資金 300,000円
  • 支出総額 300,498円
内 訳
項 目 交通費: 新幹線往復(東京~徳山間)×6名分 小 計 190,480円
項 目 交通費: 大津島巡行船往復(徳山~馬島間)×6名分 小 計 7,100円
項 目 交通費: ふれあいセンター宿泊費×6名分+施設使用料 小 計 34,020円
項 目 交通費: かぼす輸送費(大津島巡行~拓殖大学) 小 計 10,922円
項 目 消耗品費: 新商品試作材料費 小 計 14,976円
項 目 消耗品費: 島内デザイナー・松田翔剛さん
パッケージデザイン相談費
小 計 5,000円
項 目 消耗品費: 島民・松本千恵子さん 講師料 小 計 10,000円
項 目 消耗品費: 島食堂ひなた 施設使用料 小 計 10,000円
消耗品費: 安達寿富さん 謝礼金 かぼす収穫体験 小 計 18,000円
合 計 300,498円

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